昔から日本各地で作られてきたいか徳利は、作り方や形状も土地によってそれぞれ。なかでも木村商店のいか徳利は、手間と高い技術を要する製法で完成までに1週間以上かかります。
いかが回転台につるされ回っている様子はなんともシュールでおもしろい!熟練のワザを見せていただきました。
生いか
大きさや身のハリ、独特のうまみがあることから、いか徳利にもっとも適しているのがするめいか(真いか)。
皮をむく
1ぱいずつ手作業でていねいに、足、わたや軟骨を除き、きれいに皮をむく。
一夜干し
胴だけになったいかを回転台につるし、天気がよければ屋外で回しながら1日干す。
口をつける
コルク栓をつけ、たこ糸で縛って徳利の「首」の部分を作る。均等にシワを寄せて縛らないとうまくふくらまないため、この作業ができるのは数人のみ。
空気を入れる
再び回転台につるし、空気を入れて干す。乾燥の度合を見ながら、数日かけて繰り返し空気を注入。どれだけ空気を入れるかも熟練の感覚が必要。
形を整える
へらで底を作り、全体の形を整える。テーブルなどにかるくぶつけると「コン」と乾いた音がするまで、さらに1日〜1週間乾かす。
好みの温度に温めた日本酒を入れ、おちょこについで飲むだけ。
飲み終わったら乾かし、3回ほど繰り返し使えます。
木村商店三代目社長の木村トシさんによると、熱め(50度くらい)に温めたほうが、いかの味が出るそう。
2回目、3回目といかの風味がだんだん濃くなっていくそうです。
あとはちぎって食べてもよし、汁もののだしや煮ものの具としても。いか盃も同様です。
三陸海岸の最大の特徴、リアス式海岸の山田湾を抱く町。
陸から湾を望むと角度によっては狭い湾口が見えないほどで、ふだんは波静かな内海です。
そんなのどかな山田町も、東日本大震災では津波と火災による大きな被害を受けました。
震災から8年の2019年、不通だったJR山田線宮古駅〜釜石駅間がようやく復旧します。
山田町の復興はまだ途上。いか徳利でおいしいお酒を飲むことが、復興の手助けにもなるのです。
若いかたにももっと、いか徳利を味わっておいしさを知ってほしいですね。山田町にもおでんせ!