すごい畳　置きデザイン畳［KYT-kiso］

あなたのお家に「畳」はございますか。

私たち〈つらなり〉が独自に行ったアンケートでは、78％の方から「ある」という回答をいただいていますが、マンションなどではひと部屋だけが和室という方も多いのではないでしょうか。

畳の部屋に入るとなぜか落ち着く、くつろげる、ほっとした気持ちになります。いぐさの香りに自然と体の力が抜けてうとうと……そんな心地よさを知っているのは、日本人の共通感覚と言えるのかもしれません。

また、日本的精神と文化を象徴する茶道や華道、そして、剣道や柔道など、「道」の文化には今も畳は欠かせません。居住まいを正し心身を高めてくれる、そこは「道」を究める道場という名の聖域です。

大陸からの多くの技術や知識を得て日本風に発展させてきた日本人ですが、畳は日本で発祥した独自の文化です。その記述は古事記にも見えており、現在のように部屋全体に敷くという使い方ではなく、板敷に寝具として置くという使い方をしていたようです。

現存する日本最古の畳は、その断片が奈良「正倉院」に伝えられ、聖武天皇が使われた「御床畳（ごしょうのたたみ）残欠」として知られています。御床畳は、水生植物の真菰（まこも）を芯材（畳床）に、表面はいぐさ製の菰（むしろ）、そして裏面は麻布といった造りのもので、台（檜製の木製ベッドのようなもの）の上に敷いて使われていたようです。

使わないときは畳んで置いていたことから「タタミ」と呼んでいたといわれています。平安時代の「枕草子」などの記述では、畳は持ち運び可能な折り畳み式であり、部屋の中心を取り囲むように一畳ずつ設置する置き畳として描かれています。

現代のように畳が部屋全体に敷き詰められるようになったのは鎌倉時代から後であり、部屋全体に畳を敷く文化を広めたのは茶の湯を大成した千利休とされています。とはいえ、畳は長く貴族や将軍家など限られた一部の人たちのものであり、江戸時代になりやっと庶民の暮らしに普及しはじめ、職業としての「畳屋」や「畳職人」が生まれて、現代にまで受け継がれてきました。

湿気の多い日本の風土に、夏は涼しく冬は暖かく、快適に過ごせる空間を生み出してくれる畳。近年ではTATAMIとして世界の羨望を集め、海外からのニーズも高まりをみせています。

今回ご紹介させていただくのは、岐阜県・羽島市の山田一畳店（やまだはじめたたみてん）5代目畳職人山田憲司さんの「すごい畳」です。その名の通り、これまでの畳の常識を打ち破るすごさを見せてくれる「畳」の意匠。 “いつもあってあたり前”のものとして、その存在がしっかりと見えなくなってきている畳への意識を改めて喚起したい……。畳という日本ならではの宝ものを見直し、発展させて、畳文化の復活、そして隆盛を願う思いからの挑戦がはじまります。

「すごい畳」は、デザイン画の作成から型作り、いぐさの貼り付けまですべて5代目ひとりでこなし、さまざまな形の畳をパズルのように敷き詰めると、畳からひとつの絵が浮かび上がります。

これらはすべて同じ色の天然のいぐさを素材に、光が当たる角度で色が変わって見えるいぐさの特徴を活かして、畳の網目の角度をずらしながら光の反射で色を変化させるという技と工夫で表現しています。

例えば「龍の畳」の場合は、正面から見ると龍の牙は白く見えますが、反対側に立って見ると歯は金色に変化します。網目の角度を10度にしたり、30度や45度にと変えることで、単色のいぐさがいろいろな色に変化し、見る位置によって色が変わったり、時間帯や天気によっても色が変わるという動きのある作品になります。

畳という日本独自の伝統を継承するなかで、新時代を切り拓く発想とセンスを持ち、技を磨き続ける畳職人の作品をあなたのお家のお部屋全体に「敷く」、カーペットやラグのように「置く」。お買いもので日本の伝統を守る、みなさまからのご注文をお待ちしています。

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●山田一畳店　山田憲司　Kenze Yamada
1983年生まれ。畳職人。建築士事務所に勤務の後、家業を継ぎ、明治2年（1869年）創業の岐阜県羽島市「山田一畳店（やまだはじめたたみてん）」の五代目店主となる。住宅の洋風化にともなう畳の需要の減少化をくいとめ、日本固有の伝統産業である畳と畳文化の未来を創るため、様々な空間やインテリアに対応可能な変形畳・デザイン畳の創作を手がける。畳をアートと融合させたTatami Artは海外メディアにおいても紹介され、注目を集めている。京都芸術大学通信教育部在学中。